こんにちは。静岡県産のおちゃ(@ocha_shizuoka)です。
普段は怖いので意図的に人の炎上や発言に触れないようにしているのですが、今回は日頃私が考えていることと被る部分があったので、少し取り上げてみようと思います。
この記事が炎上しないことを願う。
事の顛末
私もだいぶ遅れて知ったのですが、芸人で若者の選挙への参加推進のための運動をしていらっしゃるたかまつななさんが炎上しているようです。
彼女は選挙における世代間格差の是正のため「余命投票制度」というものを提案しているのですが、どうやら火元はそちらのよう。
選挙以外でも高齢者と若者の世代間格差を訴える彼女に対し、「決して十分とは言えない年金で生活している高齢者もいるのにも関わらず、それを若者からリソースを奪っていると煽る。」「そもそもたかまつ氏の経歴は貧困とは対極に位置するものであり、生活困窮をわかっているのか。」といった批判が噴出しました。
確かに結構熱烈に世代間格差を訴えており、見方によっては世代間格差を煽っているようにも思えるかもしれません。
【若者よ、選挙に行くな】
— たかまつなな/笑下村塾 代表 (@nanatakamatsu) 2022年6月22日
若い人たちへ。
これでも、あなたは 選挙に行きませんか。
7月10日は参議院選挙です。
#若者よ選挙に行くな https://t.co/j394Kb2goR
選挙啓発のため社会風刺動画を作りました。 pic.twitter.com/Adosr9CNWY
そしてそれに対する彼女の返答がこちらのツイート。
若者の政治参加を促すための会社作って貯金数万円になったり、学費払えず大学院中退しそうになりクラファンで支えてもらったり、無料で学校に出張授業行くためにホームレスだった時期もあるんですよ。幼い頃は裕福でした。人のため、社会貢献をする大切さを両親や母校で習いました。むなしいし、悲しい https://t.co/qqxMhm7dsb
— たかまつなな/笑下村塾 代表 (@nanatakamatsu) 2022年6月24日
私が注目したのはこちらのツイートです。
なぜこのツイートが炎上したのか
このつぶやきの炎上の背景には、それこそ格差が、しかも目には見えない意識すらもしない格差が隠れているのではないかと思います。
私の上智合格は誰のおかげ
少々自分語り失礼しますが、私自身も上智大学に通っており、比較的高学歴、というか「受験頑張ったんだね。」といってもらえる事の多い学歴を運よく手にしております。
でも私は時々思うのです。
私の上智合格は私のおかげじゃないんじゃない……?
学歴と貧困は遺伝する話
ちょっとソースを探すのがめんどくなってしまったので記憶だけで話すのですが、学歴と貧困は遺伝するそうです。
実際に高学歴な親から生まれた子供は高学歴で、低収入家庭の子供は低収入という事実はあるらしい。
耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
でもこれ、「遺伝」という言葉のインパクトによって広まっただけで、実際には環境なのではないかと思います。
まず第一に、類は友を呼びます。
全く異なる境遇の人と出会う機会がほとんどないのです。
大学に進学してしまうと、高卒で就職した友人とはスケジュールを合わせづらくなり、徐々に疎遠になります。
同時に「共感」ができないのも大きな壁。
大学入学後に発生するイベントと、高卒で就職後に発生するイベントは大きく異なります。
共感はコミュニケーションにおいて大きな役割を果たしていますが、そもそも共通するイベント数が少なくなるので共感が難しくなり、結局同じような境遇の人との方がコミュニケーションを取りやすくなるのです。
加えて日本の学歴主義も類友を加速させます。
だいぶ崩れてきたとはいえ、学歴が大きな力を持っていることは事実。
高校卒業後都会の有名大学に進学した人の就職先には、同様に有名大学卒業者が多く集まります。
そこから派生するコミュニティ内でパートナーを選ぶ方も少なくはないでしょうから、高学歴(≒高収入)は高学歴(≒高収入)と夫婦になることが多いのです。
もう一点、環境がいい方が大学受験は成功しやすいという点も忘れてはいけません。
私の父はガッツリ受験戦争に参加していたタイプの大卒ですが、大学受験の志望校決めなどの際は父の経験則からくるアドバイスに何度も助けられました。
学校の先生方ももちろん助言はくれますが、やはり家庭に強く口を出すことはできません。
家族の方が良くも悪くも現実に即した正直なアドバイスをくれるのです。
また、母は短大卒ですが自分自身の短大の時の楽しい思い出を語ってくれたからこそ私も大学進学したいと思うようになったし、母自身も大学がどんなところかを知っているからこそ大学進学を応援してくれたと思います。
私の家庭には大学進学が当たり前の選択肢としてあったのです。
ではこれが全く身内に大卒がいない家庭だとどうなるか。
大学進学は当たり前ではなくチャレンジになります。
経験からくるノウハウを持った人が家庭内にいない、中には「大学なんて行かなくても生きていける」と反対する人もいるかもしれません。
学歴や収入が生物学的に遺伝するかはわかりませんが、家庭というコミュニティは尊属と同様の学歴や収入をもたらす環境を作りやすいという一面はあるように思います。
上智合格は環境のおかげ
ここまでの話を踏まえると、私の上智合格は環境のおかげであった可能性が高いということになります。
いや、まぁ自分のとんでもない努力で上智に入った人もいっぱいいますよ?
でも少なくとも私は頑張りはしたけど、でも自分の頑張りだけで上智に入れるほどは頑張っていないんです。
にも関わらず、大きな成功体験ってとても記憶に残ります。
だって多かれ少なかれ本人は努力してるし。
だからこそ、この環境が助けてくれた部分が見えにくくなってしまうんです。
贅沢な苦労
冒頭のたかまつなな氏の話に戻ります。
もう一度ツイートを確認してみましょう。
若者の政治参加を促すための会社作って貯金数万円になったり、学費払えず大学院中退しそうになりクラファンで支えてもらったり、無料で学校に出張授業行くためにホームレスだった時期もあるんですよ。幼い頃は裕福でした。人のため、社会貢献をする大切さを両親や母校で習いました。むなしいし、悲しい https://t.co/qqxMhm7dsb
— たかまつなな/笑下村塾 代表 (@nanatakamatsu) 2022年6月24日
確かに彼女はすごい苦労をしています。
誰かのために自分を犠牲にしてまで行動を起こすことは誰にでもできることではないし、本当に尊敬すべきことだと思います。
ですが、このツイートからは「環境が助けてくれた部分」がすっぽり抜け落ちているんです。
もしかしたら彼女はこのツイートに書かなかっただけで、環境の助けを理解しているかもしれません。
しかし多くのこのツイートを見た人は自分の努力ではどうしようもできないような(生命に関わるレベルの)貧困を想定していたのに、この人は周りの助けがあるからこそできる自己実現のための努力を同じベクトルで語っている(しかも周りの助けの点は無視して)と思いかねません。
彼女がこのツイートで言っている苦労は、言葉を選ばずいうのであれば贅沢な苦労。
私立の学校に通わせてくれる親がいて、大学進学への理解があって、クラファンで応援してくれる人もいるからできる苦労。(その背景には彼女の行動力もあるかもですが)
生きていくために最低限必要なこと+αの自分がやりたいことのための苦労。
他の人が想定していた苦労はヤングケアラーとかそういう自分の努力だけではどうしようもできないものに対して立ち向かう苦労。生きていくために最低限必要なことのための苦労。
例えば極端な話、発展途上国で食べ物がなく死にそうな子供に対して「食べ物がないのは辛いよね。私も起業のために借金をたくさんして寝る間も惜しんで働いていた時は食べるものも買えずにひもじい思いをしましたよ。」って言ったら、それは違くない?ってなりません?
不可抗力的で強制的な苦労に対して、選択に起因する贅沢な苦労を盾にしてしまったから炎上したのかなと思います。
他にも同様の構造は度々露呈します。
少し前にスタンフォードに進学した松本杏奈さんが、逆境に打ち勝っての進学的な売り出され方をしたけれど、実は父親が東大医学部卒(だったっけかな?とにかく社会的地位と財力があることが容易に想像できる方)だったことが判明し、全部自分の努力の賜物のように語るな的な意見で炎上したことがあったと思うのですが、構造は一緒なのではないかと思います。
あとはもう少し一般的なことだと、障がい者についてとか。
障害者の定義もこれまで「障害を持っている人」だったのが、現在は「その人が障害を持っているのではなく、その人の障害となるものを社会が作っている」という考えに変わってきています。
前者は比較的環境による影響を無視して苦労の渦中にいる人に努力を強要するという点で、構造が似ているのではないでしょうか。
結局言いたいこと
この記事で私が言いたかったことはたかまつ氏の炎上がどうこうではなく、同様の構造のことは無意識に誰でも(特に私)やってしまいがちだから肝に銘じておこうぜってこと。
人は何か成功すると努力の境界を取っ払ってしまいがちです。
自分のこれまでの苦労を肯定しなければ無意味な苦労になってしまう。
だから何か成功体験があると、ついつい環境の援助が見えなくなって、自分の努力の及ぶ範囲を過大に捉えてしまうことがある。
特に学歴や収入といった点は本人の努力でどうにかなるものに分類されることが度々ありますが、実際には環境のおかげであることも少なくありません。
成功体験が大きければ大きいほど自分の努力に目が向いてしまいがちですし、その努力を苦労の渦中にある他者に強要してしまいがちですが、その背景にあるであろう環境要因を見る視点を常に忘れずにいたいものです。
※今回記事内に名前を出させていただいたたかまつななさんや松本杏奈さんの発言や行動を批判する意図はなく、あくまでそれらから着想を得て、また私の書きたいことへの理解が容易になるように導入として紹介させていただいた記事になります。
※今後たかまつさんなどの個人名を消す形でこの記事を編集させていただく可能性があります。
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