おちゃまるの頭の中

上智大学に通う現役大学生おちゃまるが、「いつもの学びをちょっと楽しく」を目指してためになるようなならないようなくだらないことをつらつら書くブログです。

【ミソフォニア(音嫌悪症)とは】私のミソフォニアとの闘いを振り返る


こんにちは。静岡県産のおちゃ(@ocha_shizuoka)です。

 

ミソフォニア(音嫌悪症)という疾患をご存知でしょうか?

 

日本ミソフォニア協会によると、

ミソフォニアとは、特定の音に対して逃避願望や攻撃的衝動の伴う強い否定的な反応(嫌悪、怒り、憎しみなど)を示す障害です。
DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)やICD(国際疾病分類)には記載されていません。
原因は精神的というよりも神経学的と言われています。ミソフォニアの症状を抱える人にとって、その音は決して容易に我慢できるようなものでは無く、何度も音が繰り返されればその場から逃げ出したくなります。

トリガーとなる音の例

・鼻すすり
・咀嚼音
・咳払い
・咳
・くしゃみ
・歯磨きの音
・タイピング音

これらの音は「人が日常的に発する音」や「反復的な音」という特徴があります。そのため、ミソフォニアは日常生活に著しい影響を与えます。

とのことです。(ミソフォニアとは|日本ミソフォニア協会

 

私はおそらくミソフォニアです。

 

ミソフォニアは近年発見、提唱されるようになったばかりの疾患であり、私が探した限り、日本語の論文の中で「ミソフォニア」という単語を含むものが数件、ミソフォニアそのものについて書いた論文はゼロでした。

一般だけでなく、研究者の中であってもほとんど認知度がないのですから、もちろん精神科や心療内科にいっても診断がつく訳ではありません。

 

私自身は自覚症状から自分で調べ、ミソフォニアが最も近い症状だと感じました。

そのため、診断などはついていませんが、この記事では自覚症状として私はミソフォニアなのであろうという前提のもと書き進めていきます。

 

【目次】

 

小学校 音が気になるようになったきっかけ

私がミソフォニアのような症状に悩まされるようになったのは小学校の頃です。

 

私のトリガー音(ミソフォニアの症状を誘発する特定の音)は咀嚼音と鼻をすする音なのですが、どちらも同じきっかけで気になるようになりました。

 

きっかけは母の注意。

当時は私が咀嚼音や鼻をすする音に頓着しなかったため、母が注意することが増えたのです。

 

「人と食事を摂るときはくちゃくちゃ食べない。」など、内容自体は普通にマナーを教えているだけなのですが、私が引っかかったのは注意する相手。

父も同様に咀嚼音や鼻をすする音を立てているのに私にしか注意しないことに、当時の私はとてもひっかかりました。

 

さらに家庭内にはとどまらず、母は家庭外でも注意するようになります。(別に母は悪くない)

特に、児童会などで親が参観する行事でマイクの前に話した後など、周囲の他の親に対して「本当にうちの子鼻すする音がうるさくてさ〜。」的な話を始めます。

それが恥ずかしくて、嫌で嫌で、とても記憶に残りました。

 

 

そして私は意地になります。

逆に気にしすぎるほど二つの音を立てないようにしたのです。

 

自分がその音を立てないようにすると、その音に注意を向けつづけることになります。

そうすると、自ずと自分が立てた音だけでなく、他者から発せられる同様の音も耳に入りやすくなります。

 

そんな生活を続けていたら、いつの間にかその音に対してひどい憎悪のようなものを抱くようになりました。

 

ミソフォニアが聞く世界

冒頭の引用で「容易に我慢できるものではない」という記述がありますが、実感としてはそんな生ぬるいものではありません。

 

私は、ミソフォニアは自他に対してとても暴力的な疾患だと思います。

 

トリガー音を聞いた時の感情は我慢できないというより、憎悪や殺意に近いものです。

 

Twitterでミソフォニアの方のつぶやきを見ても同様のものが多いので、これは私個人の特徴ではなく、割と一般的な症状なのだと思います。

 

トリガー音を聞くたびに汚い感情を抱かざるを得ないわけですが、同時にそれに対して自己嫌悪・恐怖します。

 

 

「なぜ他の人が普通にできていることが自分にはできないのか。」

「相手は悪くないのに、なぜこんなにも嫌悪してしまうのか。」

「この衝動のせいで、いつか本当に誰かを傷つけてしまうのではないか。」

 

 

トリガー音は日常的な音のことが多いので、毎日の生活の中で大部分をこのような思いと共に生きていかなければなりません。

 

また、私は咀嚼音が苦手すぎて、家では1人リビング以外の場所で食事をとっていました。

 

自分が家族団欒を壊しているという自覚はあるのです。

申し訳なくも思っています。

でも、もし一緒に食べたら団欒を壊す以上の害を家族に与えてしまうのではないかという不安も常にあるのです。

 

ミソフォニアという疾患に辿り着く

自分でも「これは気になるとか敏感とかいうレベルじゃない。異常だ。」と思い始め、インターネット上で自分の症状について調べ始めます。

そしてたどり着いたのが「ミソフォニア」という疾患。

 

ミソフォニアという疾患を知った時の率直な感情は、衝撃と安堵、そして絶望でした。

 

 

「こんなに自分の症状と一致することある⁉︎」という衝撃。

 

「他にも同じような症状の人がいるんだ。自分だけが異常なわけではないんだ。」という安堵。

 

「治療法がないんだ。自分は死ぬまでこの症状や感情と過ごさなければならないんだ。」という絶望。

 

 

そうなんです。

ミソフォニアは治療法が確立されていないんです。

 

なんなら原因もわかっていないし、疾患としても正式に認められていない。

 

きっと「ちょっと敏感なだけなのに大袈裟に騒いで、人のせいにして被害者づらすんなよ。」と思う人もいるだろうな、と思いました。

 

中学 最初の壁は高校受験

日常生活では、授業中はただただ耐え忍ぶ、家での食事は1人、学校外では基本的に常にヘッドフォンをつけて外からの音を遮断、などの方法で過ごしていたのですが、それだけでは対処できないことが起きます。

 

高校受験です。

 

流石に受験会場ではイヤホンはつけれませんし、疾患として認められていない以上診断書などを書いてもらうこともできず、耳栓などの使用も許可されません。

 

受験という一大イベントですが、どれだけ準備を重ねたところで、当日トリガー音が聞こえれば自分ではどうすることもできない感情に支配されてしまい、問題を解くどころではありません。

 

心療内科に通うも…

少しでも症状が良くなればと、藁にもすがる思いで訪れたのが心療内科でした。

 

しかし、ここにも壁が立ちはだかります。

 

基本的に中学生以下を診てくれる心療内科は少ないのです。

特に田舎は心療内科・精神科の母数が少ないので、選ぶ余地はありません。

結局、車で40分強かかる心療内科にいってみることにしました。

 

結果としては、あまり効果はなかったと思います。

メンタル系って当たり外れが大きい、というか、合う合わないが大きいと思います。

 

私がこの時通った心療内科は、初診時にカウンセラーの方が少し話を聞き、先生に会う。

その後は毎回うつ病チェックアンケート的なのを解きながら1時間くらい待ち、診察は3分くらいで「じゃあいつもの薬出しときますね。」みたいな感じでした。

 

中学生ということもあり、漢方が処方されたのですが、受験に伴うストレスによる諸症状は改善された気がしなくもないですが、ミソフォニアの症状は全く改善されませんでした。

 

そのまま高校受験をし、まぁ合格したものの、当日は横の人の鼻をすする音がうるさすぎて集中できず、最短で解き、見直しとかはしませんでした。(私がそう感じただけだから、実際はうるさくなかったのかも。しかも受験期は寒いし仕方がない。)

 

高校 養護教諭に通院を止められる

さてさて、ミソフォニアによる地獄はこれからです。

ミソフォニアによる地獄、というより、保健室の先生による地獄だったのかもしれません。

 

一つ目の事件は高校一年の夏に起きます。

私は学校主催の夏休み海外研修に参加する予定でした。

 

研修に応募する際、渡航の際のトラブルを避けるため、渡航時に持っていく薬と処方した病院名を記載した書類を、保健室に提出する必要がありました。

 

私は空港とかで止められるのが嫌なので、念のため持っていく薬は全て、漏らさず書くことにしたのです。

もちろん心療内科で処方された漢方も含めて。

 

しかし、書類を提出した際、養護教諭から予想外の言葉を言われたのです。

 

こんな薬書くだけ不利になるのに、なんで書くんですか?

この病院はスクールカウンセラーの先生も行くなとおっしゃっているので、通院はやめてください。

 

 

 

 

 

ま、まじかぁぁぁ。

 

なんか、中学までの先生にはそんなに個人的な薬とか病院に対して面と向かって批判されたことがなかったので、予想外すぎて何も言葉が出てきませんでした。

 

ちなみに、トリガー音が気になってどうしようもなく、泣きながら保健室に行った際も、「これから仕事なので、来られても困ります。帰ってください。」と言われて教室に戻りました。

 

この二件以降、高校の先生とカウンセラーさんが本当に信頼できなくなり、高校入学後は「ミソフォニアであるということを絶対に気付かれないようにする」ことに全力を注いで生活するようになりました。

 

高校 大学受験をどう乗り越えるか

保健室の先生に通院を止められて以来心療内科への通院をやめていたのですが、大学受験を前にそうも言っていられなくなります。

 

前述のように

ミソフォニア=疾患として認知されていない=診断書でない=受験上の配慮を申し出ることができない

なので。

 

ミソフォニアの大学受験対策については別記事にまとめる予定です。

 

高校生になったことで年齢的に診察できない心療内科も減り、選択肢が増え、それまで通っていたところとは別の心療内科への通院を始めました。

 

そしたらここがすごい自分に合ってた!

 

薬の説明も、どんな症状に対して使われるのか、改善する可能性がどのくらいか、副作用はどんなものがあるかなど、とても丁寧。

薬を処方するかどうかも、どうしたいか、こちらの希望を聞いてくれる。

 

何より良かったのが、毎回比較的丁寧なカウンセリングを、先生自身がしてくれる。

 

ミソフォニアの症状が全て解消されたわけではありませんが、改善された部分も多くありました

 

大学 すっごい快適

なんとか大学受験を乗り越え、大学生になりました。

 

感想はこの一言に尽きる。

 

大学、さいっこう!

 

授業自分で取れるから、なるべくオンデマンド、オンラインにすることでトリガー音への接触機会を減らせる。

お昼は1人で食べてもいいし、イヤホンとかもつけられる。

なんなら授業中「無理だ!」ってなったら席を外しても何も言われないし、「逃げられる」という安心感もある。てか、授業中イヤホンつけてる人とかいるし。

何よりも一人暮らしが快適すぎる。他人の生活音0がこんなに快適だとは。

 

逆に一般企業に就職したらまたあの地獄が戻ってくるのかという不安や、もう誰かとの共同生活は無理だなという諦めもあるのですが、とにかく今はこれまでと比べてだいぶ快適です。

 

効果のあった対策

色々試しましたが、個人的に一番効果があったのは二つ目の心療内科でのカウンセリングです。

 

私のきっかけが「母からの注意」だったこともあり、自分と他人の差別化、境界の区別を意識するようなカウンセリングが多かったです。

 

自分は自分。他人は他人。

他人が不快に思っていてもそれは自分の感情ではないし、自分が不快に思ったらそれは自分の感情として一度受け止める。

 

みたいなカウンセリングをひたすらやり、日常生活でもトリガー音が聞こえたらなるべくその考えを思い起こすようにしていました。

 

やはりいまだにトリガー音が聞こえたらゾワっとしますが、その感情の動く幅が少し小さくなったし、反応するトリガー音の範囲も少なくなったと思います。

 

詳しくはこちらの記事にまとめました↓

【こちらもおすすめ】ミソフォニア対策の全て

ochamaru.hatenablog.com

 

 

ミソフォニアは社会でどうあるべきか

さて、ここまで私のミソフォニアとの戦いを書いてきましたが、最後はミソフォニアと社会の関係性について、私の考えを書いて終わりにしたいと思います。

 

現実的に考えて、社会の側がミソフォニアに配慮するのは難しいと思います。

トリガー音は日常的な音で多様な音が含まれるからです。

 

しかし、社会の中でミソフォニアが生きるのはあまりにも辛いです。

理想は治療法が確立されることですが、それにはまだまだ時間がかかるでしょう。

 

私は、まだ辛いと感じる時はあるものの、大学入学後はミソフォニアでも少し生活が楽です。

それは私自身が変わったのではなく、環境が変わったことが要因だと思います。

 

音を避けやすい環境、自分の生活環境に対する裁量の多さなどなど、ミソフォニアのままでも過ごしやすい環境になりました。

 

 

足を骨折してしまったら、出歩けません。でも、骨折したままでも松葉杖や車椅子があれば出歩けます。

道が悪ければ車椅子では自由に動けません。でも、車椅子のままでも広くて平らな道ならば活動範囲が広がります。

 

同様に、治療法がない今、ミソフォニアを直すことよりも、ミソフォニアのままでも過ごしやすい環境に身を移す方が簡単なのではないでしょうか。

 

大学受験など、避けては通れない、環境を変えられないイベントについては課題が残ります。

 

しかし、社会全体が一般的な価値観や他者からの評価ではない、自分軸で自分のために環境を変えられるような、もう少し寛容な社会になると、ミソフォニアに関わらず多くの人にとって生きやすい社会になるのではないかと思います。

 

 

 

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